東京地方裁判所 昭和37年(行ナ)131号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件における唯一の実質上の争点は、本願実用新案と第二引用例記載のものとの相違点が、本件審決認定のように、作用効果において差異のない単なる構造上の微差にすぎないかどうかにあることは、本件における当事者双方、とくに原告の主張に徴し明らかである(その余の点についての審決の認定は原告の争わないところである。)ところ、本件審決は、右相違に伴い両者の奏する作用効果に著しい差異のあることを看過誤認し、この誤つた認定を前提として、本願実用新案をもつて各引用例から当事者の容易に考えうる程度のものであるとした点において判断を誤つた違法があるものといわざるをえない。すなわち、本願実用新案と第二引用例前記のものとを対比するに、本願実用新案は、断面鈎状をなし基部6より先端部7に向つて傾斜面8を形成し、かつ、裏側に刳溝9を設けた接合用ゴム環体5をコンクリート管10の一端11に装着した点において、第二引用例のものと一致するが、ゴム環体5の傾斜面8は膨状であり、刳溝9と相まつて、水中においてコンクリート管10に装着したゴム環5をコンクリート管1の接合用コンクリート環体3の裏面に挿入し易くして、かつ、強力な反撥力で密着するようにした点において、第二引用例のものの弾性ゴム筒Cの内外両筒の間隙に填充物D及びゴム環Eを圧填して、接合した管挿口Aと管承口B間よりの漏洩を防止するようにした点と相違することは、本件当事者間に争いのないところであるから、両者は、考案の構成において相違することは明らかである。しかして、……本願実用新案は、右の構造により、他の部分の構造と相まち、コンクリート管を水中において接合する場合、その操作を簡単容易、かつ、接合部分が弛緩し漏水するようなことのない完全水密ならしめるものであることを認めうべく、これを左右するに足る証拠はない。本件審決は、この点に関し、第二引用例のものにおいても、填充物D及びゴム環Eによつて弾性ゴム筒Cは、相当の反撥力を有して管体に密着するものであり、また、填充物D及びゴム管Eを、前もつて、弾性ゴム筒Cに適宜充填しておき、これを管挿口Aに装着しておけば、管挿口Aと管承口Bとを水中において接合することも可能と考えられる、としているが、第二引用例のもの(それが耐震接手であることは……明らかである。)において、填充物D及びゴム環Eをあらかじめ水中に持ち込む前に、弾性ゴム筒Cに充填した場合には、本願実用新案における刳溝9に相当する構成は全く存しないことになるから、水中における接合手段として、挿入操作の容易及び密着接合の点において、第二引用例のものは……本願実用新案のもつ前記の作用効果とは相当の差異をもたらすであろうことは、その構成、本来的使用目的に徴し、まことに見易いところであり、したがつて、本件審決の前示認定は、根拠を欠く速断といわざるをえない(本件審決が、本願実用新案をもつて挿入を容易ならしめるものであることを肯認しながら、第二引用例のものにおいても水中において接合することを可能であると考えられるから作用効果に差異はないとしたのは、論理性に欠ける。水中における挿入の容易であることも考えられるのでなければ、差異は存することは明らかである。)
被告は、本願実用新案と第二引用例のものと作用効果上の差異のあることを争い、……種々の主張を試みるが、いずれも採用することはできない。すなわち、被告は、本願実用新案における刳溝は単に挿入を容易にするのみの効果を有するものである旨主張する。刳溝9が他の構造と相まち密着接合の効果をも奏していることは前認定のとおりであるが、仮に被告主張のとおりであるとしても、本願実用新案がコンクリート管を水中において接合する場合の継手である事実に徴すば、挿入が容易であるということは大きれい効果といわざるをえないことは、いうまでもないところである。また、被告は、水中埋設管は、通常せいぜい二〜三メートル程度の水深で使用されるものであるとして、刳溝の奏する前示密着接合の効果を否定するが、この水深に関する主張は全く根拠のない推測というほかはないから、これを前提する被告の主張も採用しうべき限りでない。
叙上のとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものということができる。よつて、これを認容する。(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)